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雪(素踊り)

能・歌舞伎の舞台などには沢山の雪の場面が登場します。

 舞台一面に降りしきる雪の情景は美しく、時に哀しく、能では何か深いものを、又歌舞伎では歌舞伎美の代表的なものの一つと言えると思います。
舞踊の世界にも「鷺娘」「櫓のお七」「新口村」など雪の舞台は数多くあり、地唄には「雪」という代表曲もあり、雪の降る様を表現する振りは様々な舞踊の曲のなかに見られます。

四季折々の自然の美しさを描こうとする日本人の心は、舞踊の中にも数多く生きています。梅津貴昶は24歳の時よりかつらや衣装を着けず、紋付・袴で踊る素踊りの道をつらぬいています。

素踊りは踊りの素、舞台美術などは簡略にし、実際に舞台の上へ雪を降らせる様な事はしません。

 

 

扇の動き、目の使い方、腕や手先の動きといった身体による表現で、一面に降りしきる雪の情景やその折々の心理描写などを観客に伝えます。そこには見えない、在るはずのないものを観客のイメージのなかに出現させるのです。

見えないものといえば、踊る役柄の一つ一つの心の有り様も同様です。

身体の表現により形にして見せるのです。それは鍛えられた肉体と肉体をコントロールする感覚。それを支える精神力が生み出した芸の力によってのみ可能になるのです。