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「茨木」を拝見して

 みなさんがそれぞれの役割を十分につとめられているのがよく分かる、引き締まった舞台で、時間がとても短く感じられました。家元の舞について私が申し上げられることは何もございませんが、見えてはいても動くことのない腕は、存在しないものとして自然に受け止められ、「腕を奪い返した後はどうなるのだろう」という期待を抱かせてくれました。
 特に私にとって印象深かったのは、後半、家元演じる「真柴実は茨木童子」が、腕を箱から取り出すシーンでした。家元の振り、細かい所作から気持ちの変化が伝わり、詞章、三味線、笛もその変化にぴたりと重なり、非常にスリリングに感じられました。三津五郎さんの刀を持った構えも美しく、全体として見ごたえのある「絵」になっていたと感じました。
 三津五郎さんの左足に、家元が右足を乗せた形の見得もとても印象に残りました。骨折の影響を感じさせず、立ち回りとして堪能させていただきました。
 三津五郎さんが刀を差し出す格好の見得で暗転した後、橋掛かりを退く家元から、はかなげで、寂しげな空気が漂ってきた気がしました。ただ、これは触れても仕方のないことですが、映像からは、腕を手にして見得を決められた家元の表情までは十分に伝わってこず、やはり会場で拝見したかったと率直に思いました。
 共演の方では、囃子方の調子に乗った梅丸さんのきびきびした舞は、とても見ごたえがありました。笛の福原寛さんも素晴らしい演奏だったと思います。

共同通信社大阪支社文化部
八木良憲